2024年には、軽バン市場においてEV車種の展開が加速すると予想されます。
2023年までは、三菱自動車「ミニキャブEV」が唯一のEV軽バンとして販売されていますが、他社も相次いで新型EV軽バンの発表しました。
軽バンEVは、環境に優しいだけでなく、従来の軽バンの設計を活かした荷室の広さや積載能力に加えて、モーターがパワフルで、短距離の配送にも適した走行性能が特徴です。
補助金制度の利用も可能で、購入のハードルが下がっている状況です。軽バンのEV化は、今後の市場ニーズに応える重要なステップとなりそうです。
この記事では、EV軽バンの特徴やメリット・デメリット、そして各社のモデルを紹介します。
EV軽バンとは?
EV軽バンの特徴
EVの軽バンとは、電気を動力源としてモーターで走行するバンタイプの軽商用車のことです。軽バンの魅力である荷室の広さと積載能力を活かしされた設計となっています。
現在、日本国内で発売されているEVの軽バンは、2023年12月現在、三菱自動車の「ミニキャブEV」のみです。
しかし、2023年には他社からもEV軽バンが続々と発表されており、今後ますます普及していくことが予想されています。
EV購入に関わる補助金
EV購入にあたり「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」という、クリーンエネルギーを使用する自動車の購入時に、国から一部の費用を補助してもらえる制度がりようできます。
個人、法人、地方公共団体や個人事業主や法人も利用可能で、リース契約にも適用されます。
条件にもよりますが、EVの場合、国から上限85万円の補助があり、さらに地方自治体からも補助がつく場合もあります。
本補助金は2023年末までのものですが、2024年も補助金は継続される予定です。2023年度分の申請受付は2024年1月~2月に終了見込みで、その後2024年度分の申請が開始されると考えられます。
EV軽バンの購入価格
現在購入できる軽バンである、三菱のミニキャブEV(旧ミニキャブMiEV)で考えてみましょう。
ミニキャブEVには2つのグレード(2シーター or 4シーター)があります。比較用に、ミニキャブバン(非EV)の最上位グレードも掲載します。
車種 | グレード | 本体価格 | 補助金額(※) | 実質負担 |
---|---|---|---|---|
三菱ミニキャブEV | 20kWh 2シーター | 2,431,000円〜 | 449,000円 | 1,982,000円〜 |
20kWh 4シーター | 2,486,000円〜 | 449,000円 | 2,037,000円〜 | |
三菱ミニキャブバン | ブラボー(2WD) | 1,453,100円〜 | ー | 1,453,100円〜 |
どちらのグレードでも、補助金をもらった上での実質負担が200万円前後となっています。
非EVに比べて補助金無しだと約100万円の差があります。バッテリー代が高価ではありますが、決して手の届かない価格です。
EV軽バンのメリット・デメリット
クルマの形が同じでも、ガソリン車とEVとではその特徴は大きく異なります。
メリット
EVの軽バンには次のようなメリットがあります。
- 走行音が静か
- 軽自動車だけどパワフル
- スタート&ストップが得意
- 走行音が静か
- 軽自動車だけどパワフル
- スタート&ストップが得意
走行音が静か
EVはエンジンを搭載しておらず、モーターだけで走行します。
モーターの回転音はわずかで、エンジン車に比べると圧倒的に静かです。
走行音は基本的にロードノイズのみとなります。
軽自動車だけどパワフル
通常、軽自動車のエンジンの排気量は660ccでパワーもあまりありません。
一方でEVはエンジン車に比べると圧倒的にトルクフルで、たくさん荷物を乗せてもしっかり加速してくれます。
ミニキャブを例にとると、パワーの差は次のとおりです。
車種 | 馬力 | トルク |
---|---|---|
ミニキャブEV | 31kW(42PS) | 195N・m(20kgf・m) |
ミニキャブバン | 36kW(49PS) /6,200rpm | 60.0N・m(6.1kgf・m) /4,000rpm |
ミニキャブEVのトルクは、エンジン車に比べると3倍以上のパワーがあります。このトルクは自然吸気エンジンであれば2.0Lクラスのパワーで、圧倒的です。
ストップ&ゴーが得意
モーターで走るEVは、回転数に関係なくパワーを発揮することができます。
車はある程度回転数を上げないとパワーが出ないエンジン車は特にスタートの時にガソリンを消費します。
特に宅配便のような配送に利用する場合には、短距離でのストップ&ゴーが繰り返される場合には、燃費(電費)に差が出ます。
デメリット
一方でEVは全般的に次のようなデメリットがあります。
- 車両価格が高い
- 連続走行距離が短い
- 充電に時間がかかる
- 充電スタンドの整備が不十分
車両価格が高い
とにかく走行用のリチウムイオンバッテリーのかかる費用が高い!
三菱ミニキャブ、日産サクラとデイズなど、軽自動車のEVとベースのエンジン車では、約100万円の価格差があります。
補助金のおかげでその差はかなり縮まりますが、それでもEVは高価なのが現状です。
連続走行距離が短い
軽EVは一度の充電で走行できる距離が100〜200km少ないです。
軽エンジン車では、ガソリンを一度満タンにすると400〜500km走行できますので、圧倒的な差となります。
充電に時間がかかる
ミニキャブEVだと、満充電にかかる時間は通常充電で7時間、急速充電なら35分で8割充電です。
ガソリン車ならどうでしょう。ガソリンスタンドで数分で満タンにできます。
昼間に使って夜に充電するのであればそれほど困りませんが、ヘビーユースするにはデメリットなります。
充電スタンドの整備が不十分
EVを自宅で充電するためには、屋外に充電するためのコンセントが必要になります。
また、最近はかなり増えてきましたが、出掛け先でのEVスタンドはまだまだ数が限られます。一台が充電するための時間もかかりますので、まだまだEVには優しくない環境です。
また、法人がまとまった台数を所有する場合でも、会社の敷地内に充電スタンドを設置する必要があります。
【2024最新】国産EV軽バンの車種一覧
販売中および2024年に発売予定の国産EV軽バンは以下の3種類です。
- 三菱 ミニキャブEV
- トヨタ・スズキ・ダイハツ ハイゼットカーゴベースEV
- ホンダ N-VAN e:
それぞれの車種の特徴を比較してみましょう。
三菱ミニキャブEV|現時点で購入可能な唯一のEV軽バン
ミニキャブEVは、もともと販売されていたミニキャブMiEVの改良版として、2023年12月26日より販売されています。
非EVのミニキャブバンはスズキ エブリイのOEMですが、ミニキャブEVは三菱のオリジナル車両がベースとなっています。
バッテリー容量は16kWhから20kWhに増加し、満充電状態からの走行距離はWLTCモードで最大180kmです。
新型モーター・インバーターは最高出力31kW(42PS)、最大トルク195Nm(20.0kgfm)と、一般的な軽自動車に対して数倍のトルクを発揮し、圧倒的なパワーを誇ります。
もちろん、軽バンとしての積載性能もばっちり。重たいバッテリーを積んでいるものの、通常のガソリン車軽バンと同じ350kgまで積載が可能です。
4シーターモデルでも、後部座席を収納すれば後部座席・荷室をフルフラットにすることができます。
三菱ミニキャブEV | |
---|---|
最大走行可能距離 | 180km(WLTCモード) |
バッテリー容量 | 20kWh |
最大出力 | 31kW(42PS) |
最大トルク | 195N・m(20kgf・m) |
車両寸法 | 3,395 x 1,475 x 1,915 mm |
荷室寸法 | 1,830 x 1,375 x 1,230 mm (935 x 1,360 x 1,210 mm) |
最大積載量 | 350kg |
重量 | 1,100kg(2シーター) 1,130kg(4シーター) |
ニッサン クリッパーEV
ミニキャブEVの日産から販売されるモデルが「クリッパーEV」です。
中身は基本的に同じなので、最寄り店舗や価格の微妙な治外などを比較して決めるといいでしょう。
スズキ・ダイハツ・トヨタの共同開発EV軽バン|ハイゼットカーゴベースで2024年登場
2023年5月17日にスズキ、ダイハツ、トヨタの3社によって共同開発された新型商用EV軽バンが発表されました。
スズキ「エブリイ」、ダイハツ「ハイゼットカーゴ」、トヨタ「ピクシスバン」のEV版が予定されており、このプロジェクトでは、3社の小型車製造と電動化技術が融合され、特に軽商用車向けのEVシステムが開発されました。
発売は2023年度内を見込まれています。
ボディサイズは約3395mm×1475mm×1890mm、航続距離はフル充電で約200kmと見込まれています。
最大積載量もガソリン車と同じ350kgを確保。
このEV軽バンは「環境に、地域に、あなたに優しい、“はたらく”商用軽バンのEV」をコンセプトとして、期待が高まっています。
ホンダ N-VAN e:|2024年春登場予定
ホンダの新型軽商用EV「N-VAN e:」が、2024年春にデビューする予定です。
このクルマは、使い勝手の良い充電・給電機能とEVならではのスムーズでパワフルな走行性能を備えており、荷物の積み降ろしが容易な大きな荷室が特徴です。
航続距離はWLTCモードで210km以上を目指しています。
また、N-VAN e:は外部給電器と接続することで家庭電源としても使用可能で、災害時などの非常用電源としても活躍することができます。
Honda SENSINGによる先進の安全運転支援機能が、様々な運転シーンでサポート。快適な運転を提供します。
N-VANガソリン車から好評だった「高さを確保した大空間」と「サイドとリアの大きな開口部」も、N-VAN e:に再現。最大積載量は350kgと従来のガソリン車と同様の積載性を実現しています。
2024年はEV軽バン元年になる!
2024年は「EV軽バン元年」となるでしょう。
三菱は従来から販売していたミニキャブEVを改良。そして、トヨタ・ダイハツ・スズキ連合とホンダが新型EV軽バンの発売を予定しており、4社が本格的な競争を開始します。
これらの車両は、環境意識の高まりと経済性を兼ね備え、特に都市部での配送業務や個人利用に最適です。
各社の技術革新と市場ニーズの変化が、新しい軽バンの時代を形成していくでしょう。